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最大手のトヨタは、実をいうと昨年3月期決算の段階で、ローン事業の赤字を出している。
それ以前の3年間では、トヨタの金融収益はGMやフォードよりもはるかに大きかった。
トヨタは新車販売でちゃんと儲けていたのだが、同時に割賦ローンでもかなり稼いでいた。
しかし、それが昨年3月期には赤字になったのである。
前兆があったのになぜ増産を続けたのが?こうした事態を迎えた場合、普通なら経営判断として、「これはおかしいぞ。
減産して、もう少し絞らないとダメだ」ということになるはずだ。
とくに、「売れるだけしか作らない」というのがトヨタ生産方式の本来の姿だから、当然、ブレーキを踏むべきだったのに、踏まなかった。
逆に「もっと工場の増設も急いでやれ」ということで、アメリカに大型SUVの製造工場(そのひとつが前述したテキサス工場)を増設する計画を急ぎながら、増産のペースは落とさなかった。
つまり、販売が落ち込む前兆があったにもかかわらず、増産を続けたのである。
その結果、昨年後半のリーマン・ショックの後、アメリカの需要が急激に落ち込むと、トヨタをはじめとした日本の自動車メーカーも、軒並み急に赤字に転落してしまった。
日本の自動車メーカーは、2009年3月期の決算を前に、毎月のように業績見通しの下方修正をくり返してきた。
トヨタも同期の赤字について、最初は1500億円と公表していたが、その後は3500億円に下方修正、決算発表では結局、4610億円の赤字(連結決算)に積み増された。
2010年3月期には8000億円の赤字に転落する可能性も指摘されている。
トヨタの金融事業(出所)財務資料を参考に作成そのようなわけで、最大の儲け頭であった北米で、これだけの需要減退が発生したことと、ブレーキを踏んで生産をある程度絞るべきだったのにそのタイミングを失したこと、さらにファイナンス(自動車ローン)による儲けもなくなってしまったことなど、いろいろな要素が絡み合って、日本の自動車メーカーも、ついこの間まではまだ伸びていく勢いだったが、「あれよ、あれよ」という間に転落してしまった。
ビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?ただ、日本の自動車メーカーの中で、政府に対して「公的資金を何とかしてくれ」といっているのは、今までのところ日産だけである。
その日産も、「環境対策車(電気自動車)を作るから、それに対する補助を出してくれ」ということが中心である。
アメリカの自動車メーカーのように、「公的資金にすがるしかやっていけない」とか、フランスやドイツの自動車メーカーのように、公的資金による助成を当たり前のこととしているのに比べると大きな違いがあるように見える。
結局、日本の自動車メーカーは当面、とにかく在庫を削減する、すなわち生産調整をやるということに全力を傾けている。
ただ、急激に生産調整に踏み切ったものだから、いわゆる人材派遣という形で就労させていた、非正規雇用の現場労働者をいっぺんに辞めさせることになってしまった。
これは、今まで日本の自動車メーカーが経験したことのない事態である。
もっとも、ここ川年ほどの日本の自動車メーカーを見ていると、90年代の前半、日本のいわゆるバブル崩壊の頃、第2次円高の影響もあって、トヨタといえどもちょっとした赤字を出しただけで大騒ぎをしたことがあった。
それが収まってからは、かなりバランスのいい経営で回っていたということになる。
それはある程度、グローバル化に対応しょうと、手を打ってきた成果と考えられる。
どういうことかというと、「それまでお荷物だった現地生産工場がちゃんと利益を出すようになった」ということと、それから国内の、とくに高級車を中心とした増産がアメリカ市場の動向にも結びついていき輸出が伸びたこと、さらに国内向けの生産がそこに加わって、3つの要素が何とか上手くバランスがとれていたということである。
それに加えて、為替の振れに対しても、為替が不利になった際には現地工場を増やすなど、生産のやり繰りができるようになり、その結果、ある程度の為替フリー的な体質を作ってきたのも大きい。
しかし今回の世界同時不況は、急激な円高と予想もしなかった信用収縮をもたらし、せっかく築いた為替フリー的な体質を、もう一度構築し直さなければならない事態を招いた。
この10年間に営々と貯めた利益やキャッシュフローを吐き出し、改めてもう一度、15年前に立ち返って収益構造を立て直す挑戦を迫られることになったのである。
自動車が売れなくてもローンで儲かっていたGMそれにしても、つい10年前には、自動車産業のグローバル再編の先頭に立っていることを自負してはばからなかったビッグスリーの中核GMやフォードが、なぜこれほど急に、没落の道をたどったのか。
多くの人は首をかしげるであろう。
ビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?そこでビッグスリーが、なぜあそこまで没落したかということを考えてみたいと思う。
もちろん、これについては3社それぞれの戦略や競争力の相違があり、原因は一様でないこともあるが、共通している点も多い。
その理由のひとつを端的に指摘すると、ビッグスリーは、製造業の原点というものを忘れて、短期的利益志向と、それから金融やM&Aで浮利(実業ではなく、投機や相場で得る浮かれた利益のこと。
野村詮券の創業者である野村徳七氏は、証券業に出るにあたって「浮利は追わず」という有名な言葉を家訓のようにしている)を追うことに、没頭してしまったということだ。
これはどういうことかというと、今からだいたい10年少し前、「自動車産業の世界的なグローバル再編」ということが騒がれたことがあった。
その当時、例えばGMのキャッシュフローは、トヨタの約3倍近くあるといわれていた。
ところが、そのキャッシュフローの大部分は、その販売金融の子会社である。
だから、GMの業績のうち、本来の製造業としてのクルマ作りできちんと儲けている部分は非常に少なくなっていた。
一方で、ファイナンスが占める部分が非常に大きくなっていたのである。
2004年のGMの最終利益に占める金融事業の割合は78%にも上っている(『日本経済新聞』09年5月11日)。
その背景として、アメリカでは、自動車の割賦販売には所有権の留保という仕組みがあり、取り損ないはまずないということがある。
そして、販売金融が膨張するにつれ、割賦期間もかつての24カ月から36カ月、そして48カ月、最近では高い車を売るのに60カ月という長期の割賦も現われた。
日本でも割賦が盛んになった頃は、「現金で払うからまけてくれ」とディーラーにいっても、嫌な顔をされて「いや、ローンを組んでください」と、ローンを勧められた時期があった。
しかしアメリカでは、車を購入する際にローンを借りるのは当たり前の話になってしまい、事実、そうしたファイナンスは儲かったのである。
金融事業は、実に膨大なキャッシュを動かすものだったから、GMACはいろいろな金融商品に関係していくようになった。
おそらくは低所得者層向けの住宅ローン、サブプライムローンにも相当のカネを出していたのではないだろうか。
「低所得層でもかなり高いクルマが買えますよ」という話は、「低所得層でも住宅が買えますよ」というサブプライムローンの世界と根は一緒である。
GMACは、そうやって金融収益をどんどん上げ、それがGMのキャッシュフローの大部分を占めていったということだ。
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